もう何年も前のことになりますが、母から「クリスマスにさようなら」(浅暮三文著・徳間書店)という本を勧められて読んでみました。

舞台はおそらく、少し昔のヨーロッパのどこかの町。クリスマスイブに捨てられて、ゴミ収集車に積まれた4体のくまたちが、焼却炉に向かうまでの道中、元の持ち主との思い出話を優しく語る・・・という形で物語は進行していきます。

くまは4体なので、4人の持ち主との4通りの物語があるので、ざっとご紹介すると・・・

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宝石泥棒

まず、1話目は、宝石泥棒が主人公のお話。

宝石泥棒マルチェロは、ある屋敷に、宝飾品を盗みに入るのですが、盗んだのはなんと、テディベア。マルチェロにとって、最初は、ただの物でしかなかったテディベアが、子どもの頃からずっと孤独で過ごしてきたため、やがてこのテディベアに愛着を感じはじめます。子どもの頃、貧しさから食べることができず、憧れだった「シフォンケーキ」から「シフォン」と名付け、いつしか、なくてはならない存在に。そして、ある日のこと、良き相棒となったシフォンと組み、オークション会場に盗みに入ることを計画するのですが・・・

恋に悩むアラサー女子

2話目は、恋に悩むアラサー女子のお話。

カフェで働く32歳のリンダは、ある日、中古のテディベアを買い、そのテディベアに、いつも話しかけたり、自分の恋の悩みなどを話していました。ある時、リンダは大失恋をしてしまい、すっかり新しい恋に臆病になってしまうのですが、そんな中、リンダの働くカフェで、別の町からやったきた男性と出会います。彼は、リンダに告白し、一緒に来てほしいと誘います。しかし、リンダは迷い、いつものようにテディベアに意見を求めるのですが・・・

フィドル奏者

3話目は、フィドル奏者の話

フィドル奏者で、オハイオの貧しい村出身の「ミスターB」は、幼い頃から、音楽で生計を立てることを夢見ていました。フィドル奏者としてキャリアを積み、その夢は、やがて、トップミュージシャンになることへと変化するのですが、運に見放され、10年過ぎても芽が出ることはありませんでした。そんなある時、「ミスターB」は、道端でフィドルを弾く老人に出会います。この老人に小銭を恵んだところ、そのお礼にと、「運」を手に入れる方法を教えてくれたのです。

早速、教えてくれたとおりにすると、「ミスターB」に次から次へと運が舞い込み、一躍トップミュージシャンに。火のように激しい演奏はたちまち人々を虜にし、「ミスターB」は大きな成功を手にしたのです。

しかし、成功もつかの間、「ミスターB」は黒い影に怯えるようになり、演奏を途中でやめたり、仕事をすっぽかすように。いつしか周囲の人々に見限られ、手元に残ったのは、かつて恋人がプレゼントしてくれたテディベアと愛用のフィドルだけとなったのでした。そして、その後・・・

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小学生の双子の女の子

4話目は、小学生の双子の女の子の話

クリスマスイブの夜なのに、なかなか眠れない双子のジグとザクは、本で読んだ、空から人々が眠る砂をまくという「砂男」に砂をもらいにいこうと決心します。そして、家の中をさまよううち、クローゼットの中に子供部屋のドアとそっくりのドアがあることに気が付きます。そこからは月の光がもれていたため、そっと開くと、そこには森が広がっていて、二人は、お気に入りのテデイベアと3人で、森の中に入っていくのですが・・・

以上、4話のあらすじです。

わけあって、この4体のテディベアは、持ち主と離れ離れになってしまい、捨てられる運命にあるのですが、このテディベアたちが、最後まで、持ち主を誇りに思い、持ち主の幸せを願っているのが、とてもいじらしくて切なくなりました。

また、本の中の、

愛されなくなった彼らはただのモノになってしまう。

彼らが生を受けるのは新品としてこの世に生まれたときではない。それを愛し、共に暮らしてくれる人間が現れたときからだ。そのときから彼らは目覚め、その一生を開始するのだ。

という文章を読んで、「うちの子たちもそうなのかな~?」と思わず、全員抱きしめたくなりました♪

テディベアやぬいぐるみを大切にされている方に、ぜひ、おすすめの一冊です。