紹介
サイズ:約47センチ
タグ無し
メーカー不明
1950年代イギリス
このテディベアは、腕は短く、大きなカップ型の耳をしており、
1950年代のイギリスのベアの特徴を持っています。
2012年11月13日に我が家にやって来ました♪
毛は?
おそらく鮮やかだったであろう、ゴールドの毛はすっかり色あせて
腕や足の付根に、少しそのゴールドの名残が残っている程度です。
目は?
レトロで小さなプラスティックの目。
鼻、口は?
どこかのお母さんが治したのか?
と思える、素人っぽい刺繍(笑)
耳は?
大きなカップ型の耳
両手両足は?
両手両足とも、爪が3本刺繍されています。
パッドは補修されており、
両足には厚紙が入れられているようです。
腕にはジョイントが入っていて、少しいかり肩です。
補修されているのかもしれません。
引き取った人が補修したのか、
それとも持ち主だった人が補修したのか不明ですが、
いずれにしてもあまり上手ではありません(汗)
ボディは?
お店の人の話によるとボディの中身は、
すべて木毛に詰め替えられているとのこと。
さらに、首はグラグラで、うつむいている状態のため、
なんだかとても悲しそうに見えました。
そこで、春夏はスカーフ、秋冬はマフラーをしてあげると、
首が少し支えられ、前を見るようになりました。
スカーフで決めたタロウくん
上を向いて歩こう!
そして、背中にも補修の跡が・・・
このような特徴から、このベアが過ごした歳月を感じさせます。
また、経年劣化だけではなく、かつての持ち主だった子どもに、
かなり抱きしめられたり、遊んでもらったりしたのでしょう。
ここに、ビンテージやアンティークのベアならではの、
良さがありますね。
それではここで、タロウくんの物語(2012年12月執筆)を、
ご紹介しましょう!
物語
タロウくんはみんなが生まれるよりもずっとずっと昔、
イギリスという国のある工場で生まれました。
他のたくさんのテディベア達、タロウくんのお友達も同様、
私達人間にかわいがられるために、また人間を慰めるために、
それぞれみんな「さようなら」をして、人生を歩んでいったのでした。
ある者は子どものプレゼントとして。
ある者は婚約者へ。
ある者は独りぼっちの老人へ。
ある者は何かのお祝いとして。
みな、それぞれの家庭へと役割を果たしに行ったのでした。
タロウくんもきっと、そうだったに違いありません。
私も詳しいことはよく分からないのですが、タロウくんの最初の持ち主は、
幼い子どもだったようで、タロウくんの体がそれを物語っています。
色あせて短くなった黄色い毛。
手足のパッドや背中に補修された跡。
詰め替えられた木毛。
ちょっぴりくてっとなった薄汚れた体は、
タロウくんが生きてきた年月の積み重ねもありますが、
きっと、子どもたちとたくさん遊び、抱きしめられたのでしょう。
タロウくんがその後、約60年ほどの年月をどう過ごしていたのかわからないのですが・・・
長いこと物置小屋や納屋に入れられたまま、
忘れさられていたのかもしれませんし、
いろいろな人の手を転々としていたのかもしれません。
2011年のクリスマスシーズンには、
タロウくんはまだイギリスにいたのかもしれません。
古くなった体は再び補修され、少しだけきれいになって、
また、新しいご主人のもとへ旅立つ日を待っていたことでしょう。
しかし、タロウくんを買っていった人は新しいご主人ではなく、
新しいご主人探しを手伝ってくれる人でした。
その人はタロウくんの知らない人、
そう、日本人でした!
そこでタロウくんは、飛行機に乗ってはるばる日本へ来たのでした。
他のテディベアも一緒でした。
その子はタロウくんよりももっとボロボロで、
小さなココア色のくまでした。
「ぼくたちどこへ行くんだろうねぇ・・・」
2匹は日本にある改装工事の済んだ大きなデパートにある、
アンティークのお店にならべられることになったのです。
タロウくんもこのココア色の子も、
「お店」というものがどんなものかはよく知っていました。
だって、もともとは2匹とも「お店」から
人生を始めたのですから。
タロウくんとココア色の子は2匹がちょうど収まるくらいの、
小さなグリーンの椅子に座って来る日も来る日も、
誰かが迎えに来てくれるのを待っていたようでした。
時々、タロウくんたちのところでお客が止まって、
店員と話していたので、タロウくんはドキドキしたに違いありません。
でも、残念なことに、お客はタロウくんではなく、
その椅子に興味があったのでした。
タロウくんとココア色の子はとうとう、よけられて・・・
別の、小さな椅子に押し込められてしまったのでした。
誰もタロウくんを欲しがらず、タロウくんはただの商品として、
飾りとして、個性を失いつつあったのでした。
そう、私がタロウくんを手にとるまでは・・・
タロウくんは初め、とても寂しそう見えました。
ココア色の子と寄り添いながら、見知らぬ国へ来たのですから、
無理もありません。
私はすぐにタロウくんを買いませんでした。
なぜかというと、私はほんとうにタロウくんが必要なのか、
また、タロウくんはほんとうにうちの子になりたいのか?と考えていたからです。
私にとってタロウくんは「ヴィンテージ」という特殊なクマだったから。
新品のテディベアたちはとても誇らしげに見えます。
そして、どの子も天真爛漫な無邪気さがあります。
一方、タロウくんは少しくてっとなって疲れているように見えました。
しかし、私はタロウくんを忘れることができず、
その後もお店に通いました。
タロウくんは相変わらずまだいました。
私は自分に素直になってみました。
次に私がお店に来た時、タロウくんがいなくなっていたらどんな気分になるだろう・・・?
そして、私が他のアンティークなクマではなくタロウくんを好きになったのは、
アンティークだったからではなく、タロウくんの「顔」が、
気に入ったということにも気がついたのでした。
私はドキドキした気持ちを抑えきれずに、タロウくんを抱き上げました。
きっとタロウくんも同じ気持ちだったことでしょう。
ただ、私は少し胸が痛みました。
あの、小さなココア色のクマは、タロウくんがいなくなって1人ぼっちになってしまうのです。
テディベアとの出会いは、とてもワクワクする楽しいものですが、
テディベア同士はお別れの時でもあるのだという事実が少しさみしいです。
「幸運を祈っているよ!」
「キミも元気で!」
そんな言葉を交わしたのでしょうか。
タロウくんはココア色の子と別れを告げてうちに来ることになったのでした。
タロウくんがうちに来て1ヶ月が過ぎました。
タロウくんは少し恥ずかしがりやですが、
「アンティーク」ではない我が家にもしっくりなじみ、
以前からいる、新品のテディたちともすっかり打ち解けています。
タロウくんは60数年という年月を人間とともに生き、
愛され、遠い外国から旅して来たテディベアです。
きっと、いろいろなことを話したいに違いありません。
でも、タロウくんは今はそれどころではないようです。
新しい生活が、しかも日本という国での生活が珍しく、目をくるくるさせています。
タロウくんも、いつか自分の物語を話してくれる時がくるでしょう。
我が家のテディベアたちも、きっと「先輩」の話を聞きたいでしょうから。